サイレント・ウィッチ VIII
「〈沈黙の魔女〉モニカ・エヴァレットが申し上げます。どうか、皆さんの力を、貸してください」
推理編の終わり。8冊かけて集まった手がかりによって第二王子・フェリクスに関わる残酷な真実が明らかになる。同時にそれぞれの思惑が絡み合った結果、第二王子の処刑が決定する。
フェリクスを取り巻く陰謀が父の死の原因だと知ったモニカ。さらに帝国との戦争の兆しまで見え始める。絶望的な状況でモニカの選択は……
親しくなればなるほど秘密を抱えていることが負い目になる。ここまでの潜入捜査で優しい人たちと出会い、変わったからこそ重みが違うモニカの告白シーンは本当にドキドキものだった。
みんななら大丈夫……と思うけどどうなるんだ~?
というところでまさかの次巻に続く!ここまで鬼畜な引きも中々あるもんじゃないぞ。
8巻9巻を連続して読める状況で本当に良かった。
それにしてもやはりラナとシリルに対するときのモニカは完全に素になっているというかありのままの感情をぶつけているよな。この二人のモニモニポイントはもうカンストしてるでしょ。
Ⅷ巻のイチオシめちゃすこシリモニポイント
「違うっ、違うっ、違うっ、違うもん……っ!」
強い衝動がモニカの胸を揺さぶる。これはきっと、悔しいという感情だ。
地団駄を踏みたいほどの悔しさを胸に、モニカは叫ぶ。まるで駄々っ子のように。
「シリル様は、すごいんですっ!数字のことしか分からないわたしと違って、色んなこといっぱい知ってて、仕事を教えるのも上手で、周りのことをよく見てて、いつも自信があって、堂々としてて……だからっ……だからぁ……っ」
「だから……わたしが尊敬するシリル様のこと、悪く言っちゃ。イヤ、です……」
サイレント・ウィッチ IX
〈沈黙を〉
解決編
最高審議会の場でフィリクスの処刑を阻止しつつ、クロックフォード公爵の陰謀を防ぎ戦争を阻止する。真実を明らかにするだけでは足りない、最善の結果を引き寄せるためにモニカが描く数式は…
前巻の衝撃の告白からの続き。もはや告白を通り越して懺悔になってしまうモニカの姿が痛々しい。そんな時頼りになるのはやっぱりラナとシリル。表紙でもモニカの近くに描かれている二人。この二人の出会いから始まった学園で友人たち、さらには七賢人の同僚との絆(笑)を総動員してモニカはクロックフォード公爵との対決の舞台を作り上げる。
それぞれの得意分野で力を発揮する仲間たちが頼もしい。元から仲の良かったメンバーは言うまでもないが、バーニーやヒューバートといった、第一印象最悪の連中も憎めないやつになったものだ。最近の巻で一気に悲劇のヒロインっぽくなったブリジットの最後まで気高くあろうとする姿も良かった。正にモニカが手本とすべき姿w
最高審議会の対決の答えは沈黙。真実を明らかにすれば破滅を。公爵に沈黙を促す様は正に沈黙の魔女にふさわしい結末だった。
その対決の裏で繰り広げられる激しいバトル。最大の障害と目されたのは…まさかの同期どのw今回一番の被害者は間違いなくこの人。
「勝負はテーブルに着く前から始まっているのですよ、同期殿」
ありがとうルイス、貴方の教えが勝利の鍵になったよ。
そして長く続いた護衛任務の終わりと新しい生活の始まり。選ばれたのはラナでした。やはりラナモニが正義……
思えばラナが最初の友達になったことがすべての始まりだった。シリルたちは第二王子の護衛という任務の性質上関わる可能性はあってもラナと仲良くなったのは本当に偶然だったのだから。それが巡り巡った結果の大団円。ラナこそ救国の英雄なのでは。
さておきアイクとシリルとの三角関係だが……自覚がないだけで明らかにモニカの矢印はシリルに向いてるよなぁ。
夏の風とは違う、魔力を含んだ涼やかな風に、モニカはパッと立ち上がり、小走りで玄関に向かった。
そしてちょっとだけ前髪をいじって、小さく深呼吸をしてからドアノブに手をかける。
モニカはシリルが来る予定のある時だけ、玄関近くの窓を開けている。そこから、ひんやりとした空気を感じたら、彼が訪れたとすぐ分かるからだ。
本当にモニカの無自覚な好意をこういうさりげない描写で入れるのが上手い。これでシリモ二に行かないのは嘘でしょ。アイクは…まぁ弟子として頑張れ。
ただモニカはシリルの父性に惹かれているような気がしないでもないのが一抹の不安でもある。いや、ないか…
正直大団円なのでここで終わってしまってもいいと思えるぐらい見事な話だったがもちろんまだ続きが見たいという気持ちもある。
でも今回はアニメきっかけで読み始めてここまで一気に読めたものの、これからは一冊づつ待たなければいけないのが辛い…